日々のぜいぜい

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聖職の碑(せいしょくのいしぶみ)

2011.09.07
聖職者と聞くと誰を思い浮かべるかは、その生まれた年代によって隔たりがあるだろう。
私たちより古い年代は、たぶん宗教家よりはより身近に教師がそうであった。(今もそうであると願う)
どんなに尊敬し命を救ってくれる医師や消防隊員の仕事でも聖職とは言わない。
親の手を離れ、右も左もわからないひよこから多感な時期、そして大人の入り口までの長い時間を教え導いてくれる存在。
親の手だけでは成し得ない長い道のりの先導者として、知識を教え込むだけではなく人生の師ともなる大人。

私の通っていた中学は県内でも屈指のやんちゃ中学だった。
修学旅行の際は、新幹線の車両の前後に公安が張った。もちろんグループ見学なんかなし。
高校に入学した時に、出身中学を聞かれると、一歩どころか五歩も十歩も引かれた。
そんなとんでも学校でも子供達は先生を尊敬し、時に恐怖した。授業妨害なんてあり得ない時代だった。
対外的には荒れていたけれど(喧嘩上等ってやつね)、学校内は穏やかだった(女子的にはね)
やんちゃっ子達は、ある意味学校を愛していたと思う。その縄張りを侮辱されると許せないのだ。
挙句が殴り込みみたいな形を取ってしまう、余りにも無垢で単純だった。

後の同窓会(中学の教室)で当時流行っていた金八先生の話になった。
担任は「金八先生はだめだ」と言っていた。
クラスメート達は、その時先生に反発した。大いに議論したように思ったけど、
今思えばそんな綺麗事じゃないんだと言いたかったのだろうなあ。
そして、私たちをちょっぴり大人として扱ってくれたのだろうなあと。
話は大正2年8月26日、上伊那の中箕輪尋常高等小学校での西駒ヶ岳(木曽駒ヶ岳)修学登山での遭難事故が題材となっている。
参加者37名(教師3名、同行青年9名生徒25名)のうち赤羽校長と同行青年1名、生徒9名が疲労凍死するという痛ましい事故で、
力尽きるもの、壮絶に生き抜くもの、子を守り、また救援を求めに走る教師の描写は、新田次郎得意の緻密な描写に圧倒される。

当時の教育的時代背景は、特に長野県のそれは、必ずしも文部省の意向どおりでなく、
白樺派の理想主義教育というより自由で複合的な教育への模索が感じられた。
それに理解を示しつつも、文部省の教科書中心主義な実践的教育を校長の立場として推し進める赤羽の葛藤が根底にあり
それが、修学登山を修練の場として位置づける赤羽の行動としての主張になっていく。

白樺派の理想主義教育は後に亜流の気分主義教育と揶揄される後継者たちによって、父兄の顰蹙へと繋がって終焉していく。
それはまるで今の”ゆとり教育”の行く末と酷似していて、やはり時代は繰り返すものなのかと感慨深かった。

子を失った親の鬼気迫る様子など、モンスターペアレントなんて言っておれないほどのもので
生き残った者、教師の辛さが悲しい。

遭難の一報が入った登山口内ノ萱の対応がすばやい。村民総出で遭難対策にあたる。
午後4時という時間に一次救助隊が捜索に向かい、まだ新築されたばかりの民家を開放し、炊き出しも素早い。
近隣の村々からも多くの救援が駆けつける。
東日本大震災時のように日本人の助け合いの精神が、昔から脈々とうけつがれていることに本当に感銘を受ける。

しかし、なぜ台風の発生した時に高山へ向かったのか、破壊された伊那小屋をあきらめ、木曽小屋へ向かわなかったのか
読み進めるといろいろと疑問が沸き起こるが、巻末の取材記に新田次郎の検証がなされている。
この取材記が小説ともども読み応え充分で、取材当時(昭和50年)当時の生還者からの証言は生生しく
今ではとても無理であろう実名での小説と相まって、リアリティ充分だ。

さて、遭難場面で「寝ちゃダメだ、寝ると死ぬぞ」ってよくあるでしょ。
あれどうしてなのかわからなかったんですよ。
寝たほうが体力温存されていいのではと思っていたのですが、この小説読んで初めてわかりました。
低体温の状態で寝ると、意識が混沌として更に体温を奪われてより危険な状態に陥ってしまうんじゃないかと。
他にも岩小屋でのビバーク方法など参考になります。

ってか、そんなこと知っとけ!

翌年、木曽駒山中には伊那町が中心となって基金を募り西駒山荘と「遭難記念碑」という遭難碑が建った。
以来百年、伊那谷の中学2年生は、毎年駒ケ岳に学校登山を続けている。

今のところ今年一押しの本です。
DVDも借りて見てみようかな。カメラが木村大作だし。

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秋は読書もね

Comment

- 木曽駒

聖職の碑、学生の頃読んだだけなので、記憶が曖昧。。。。
>巻末の取材記に新田次郎の検証がなされている。
そんなのあったかなぁ?って今はアルツの一歩手前です。

>破壊された伊那小屋をあきらめ、木曽小屋へ向かわなかったのか
それは、歩いてみればわかりますよ。
雨風の中、現在の西駒山荘から木曽小屋の間は、結構きつい道です。特に頂上直下の岩岩は、疲れた体には絶壁に見えたことでしょう。

ぜいぜいさん、いつか桂小場から歩かれる機会があればご一緒しましょう。
西駒山荘までは、穏やかないい道ですよ。

それと、現在の聖職の碑の石碑に関しては、賛否両論。。。。。
この本を読んで、聖職の碑を訪れる者にとっては、「何だかなぁ~~」な感じです。

この道には、聖職の碑以外にも落雷による事故の碑などもあり、登山の厳しさを知らされる道でもあります。
ぜひ歩いてみてください。
2011.09.07 Wed 14:29 URL [ Edit ]

- yamaneko

テレビで見たよ
脚色かな 山小屋燃やした
そこの所 憤りを感じた

八甲田も奥入瀬を旅行中 バスの案内でその
遭難の日が日本最低気温を記録した同日との事 旭川でマイナス41度

北アルプスでテント横で友となった人が熊野に居る 山に行きたいなと思ってアメダス情報ばかり見ていた 大台ケ原は雨の多い地形だ
異常を感じてメ-ルした 幸い 人命は大丈夫だ

富士山で遊び半分で登って救助された人がいる

奥秩父と北アルプスで救助のヘリコが落ちた

昨年 9月に台風接近の折 富士山に登った
熟達者が一緒だつたけど 強風に閉口した

気おつけよう 自然相手のスポ-ツ

2011.09.07 Wed 15:11 URL [ Edit ]

遭難の記録 - リブル

小説としてはとても面白いですね。
大学の頃、食い入るように読んだ思い出があります。

この本ではないですけど、学校登山の落雷による遭難の記録は、子供の絵が書かれている下に×印が書かれていて、ひどく胸をうたれました。

いずれにしても安全に登山したいものですね。
2011.09.07 Wed 19:55 URL [ Edit ]

- ぜいぜい

☆駒ちゃん
さすが地元だけあって詳しいね。
新田次郎も木曽小屋までは無理であったろうと検証していました。
今の感覚でいけば無謀だとか、無責任とか言えるでしょうけど、
当時の情報も心もとなく青年団も参加している中で、教師を責めることは酷というものでしょうね。

この道は是非とも歩きたいなと思っています。駒ちゃんと歩きたいな。
いつになるかわからないけど、絶対その時はつきあってね。

☆山猫さん
 山小屋燃やしたのは脚色ではなく実話です。
この修学登山を軸に据えれば、暴挙だし山屋としてあるまじき行為です。
ただ、強風で避難小屋が壊滅的になった時点で、その時生き長らえるための手段を批判することができるでしょうか。
最低限修学登山とすれ違った時、この時の登山者は伊那小屋のないことを伝えるべきだったと、
悔やまずにはおれません。
今でこそ、装備もしっかりしているし、山小屋も整備されているので、
積雪期以外は無茶をしない限りは、こんな事態はまれでしょう。
それでも自然を自分より下に見ることは戒めたいですね。
山猫さんのおおっしゃる通りです。

☆リブルさん
子供の遭難は悲しいです。それがどこまで自分の意志か判然としないからです。
近年の学校登山は無事故だと聞いています。情報は大事ですね。
その時は無謀と思わなくても、結果的に無謀だと避難されることは登山では多々あると思います。
自分の行動に自信を持つことも大切ですが、時に客観的に判断することも大切ですね。
2011.09.07 Wed 22:45 URL [ Edit ]

- 木曽駒

ぜいぜいさん。ラジャー!
いつか一緒に歩きましょう。
できれば初秋がいいかなぁ~~。
胸突き八丁の最後、茶臼と将棊頭の稜線にポンと出たときに、麦草岳が見えるのも、うれしい道です。
2011.09.07 Wed 22:59 URL [ Edit ]

お読み捨て下さい。 - 河童

 私とtochikoは友人の遭難事故の第一発見者となり
県警と一緒に雪の中亡くなった友の捜索にあたりましたが
同時の地元の何もしなかった山岳会に
私と県警の対応を非難された経験があります。
 でもその時の事はその人達でしか解らない。
私達はそいの真実をもって反論も
真実を語ることもしたくありません。
 へんなコメントですいませでしたm(_ _)m
2011.09.08 Thu 06:32 URL [ Edit ]

- ぜいぜい

☆駒ちゃん
駒ちゃんの心のお山が見えるいいルートなんだね。
秋ですね。のんびり待っててね。

☆河童ちゃん
お山は刻一刻と変化するもの。一刻を争うときの対応を後から批判するのはフェアではないですよね。
命を前にした時の行動は、もう本能ですから。
この小説の教師もしかりです。生き残ったものは、最善を尽くしても批判されます。。。
2011.09.08 Thu 09:27 URL [ Edit ]

- hiro

こんなお話があったんですね。
ちょっと調べたら・・・映画にもなってたんですね。
今度、本読んでみます。秋の夜長ですもん。
2011.09.08 Thu 11:48 URL [ Edit ]

- ぜいぜい

☆hiroちゃん
この本はおすすめですよ。
ぐいぐい本の世界に入っていけます。そして、切ないです。
2011.09.08 Thu 18:06 URL [ Edit ]

- 上松 B作

実は読んだことないですけど、私はこう思います

山で死んではいけない・・・と

「君子危うきに近寄らず」

己の力を知ることが1番大切なのかもしれませんね



2011.09.09 Fri 21:29 URL [ Edit ]

- ぜいぜい

☆Bちゃん
そうですね。
お山は危険なスポーツだっていうことは常に念頭においておかないといけませんね。
とにかく無理はしないことだよね。
2011.09.10 Sat 15:10 URL [ Edit ]

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